HPC(High Performance Computing)とは——スーパーコンピュータからAI基盤まで
HPCとは
HPC(High Performance Computing:高性能計算)とは、通常のコンピューターでは処理しきれない超大規模な計算を、多数のプロセッサや計算機を連携させて高速に実行する技術・システムの総称です。
スーパーコンピュータ(スパコン)はHPCの代表例ですが、現在はGPUクラスターを使ったAIトレーニング基盤も「HPCインフラ」と呼ばれることが一般的です。
HPCが使われる場面
従来型HPC(科学技術計算)
- 気象予報・気候変動シミュレーション
- 創薬(タンパク質構造解析・分子動力学)
- 航空宇宙・自動車の流体シミュレーション(CFD)
- 核融合・素粒子物理シミュレーション
- 地震波解析・地下資源探査
AI時代のHPC(AI/ML計算)
- 大規模言語モデル(LLM)のトレーニング
- 画像認識・音声認識モデルの学習
- 自動運転向けAIの学習・評価
- 創薬AI(AlphaFoldなど)
かつてはスパコンと企業のAI基盤は別物でしたが、現在は技術的にほぼ同じGPUクラスターを使っており、境界が曖昧になっています。
HPCとスーパーコンピュータ
日本を代表するスパコン「富岳」(理化学研究所)はHPCの最高峰の例です。富岳はCPUベースですが、現在建設・計画中の次世代スパコンはGPU(NVIDIAのBlackwell等)を中心とした構成になっています。
世界のスパコン性能ランキング「TOP500」では、上位システムのほとんどがGPUを大量搭載した構成になっており、従来の専用CPUとの差は縮まっています。
データセンター設計への影響
HPCワークロードはデータセンターに特殊な要求をします。
超高電力密度
HPCシステム(特にGPUクラスター)は、1ラックあたり数十〜120kW以上という極めて高い電力密度を要求します。通常のDCでは対応できないケースが多く、専用設計のHPC向けDCが必要です。
高速ネットワーク
HPC/AI学習では、多数のGPUが常に大量のデータをやり取りします。NVIDIAのNVLink(GPU間接続)やInfiniBand(サーバー間接続)などの高速相互接続ネットワークが必要で、通常の汎用DCでは構築できません。
液冷の必須化
高電力密度に対応するため、直接液冷(DLC)や液浸冷却が事実上の必須要件になっています。
国内のHPC動向
理化学研究所(理研)・産業技術総合研究所(産総研)・各大学スパコンセンターでは、次世代AIスパコンへの更新計画が進んでいます。
民間では、さくらインターネットが国立研究開発法人向けにGPUクラスターを提供するほか、大手クラウド(AWS・Azure・Google Cloud)が国内リージョンでGPU/HPC向けインスタンスを拡充しています。
まとめ
HPCはかつての「スパコン=研究機関のもの」という位置付けから、「AI学習基盤=企業にとっても身近なもの」へと急速に変化しています。GPU・液冷・高速ネットワークという3つのキーワードがHPCとDCを結ぶ接点です。AI投資を検討する企業にとって、HPCインフラの理解は不可欠です。
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この記事は DCトレンド研究 が独立した第三者の立場で執筆しています。