電気は、道が配る — 北海道が石狩・苫小牧の990MWを「電力つき」で公募。届くのは2030〜32年

✍️ DCトレンド研究編集部(現役DCエンジニア監修)
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北海道が募集しているのは「土地」ではなく「電気の予約」

2026年10月20日、北海道が石狩市と苫小牧市で、データセンター事業者の公募を始めました。9月11日に国の「GX戦略地域(データセンター集積型)」に認定された2つの市です(認定のニュースはこちら)。

ただ、公募の正式な名前を見ると、ふつうの企業誘致とは違うことが分かります。

「GX戦略地域(データセンター集積型)における電力申込内容の承継に係る公募」

ポイントは「電力申込内容の承継」です。仕組みはこうです。

  1. 道が先に、北海道電力ネットワークに、6カ所の用地の電力の申し込みをしておく
  2. 公募で、その用地にデータセンターを建てる事業者を1カ所ごとに1社選ぶ
  3. 選ばれた事業者(優先交渉権者)が、道の申し込みをそのまま引き継ぐ

事業者から見れば、電力会社への申し込みの「順番待ち」を、道がすでに済ませてくれている用地を手に入れられる、ということです。

6カ所、合計990MWの中身

公募要領に書かれている6カ所は次のとおりです。

用地申込電力受電電圧電気が来る時期(目安)面積状態
石狩①80MW+80MW66kV2031年10月以降約5.1ha造成済み
石狩②40MW66kV2031年11月以降約1.9ha造成済み
石狩③75MW66kV2031年12月以降約4.8ha造成中(2028年度から分譲)
石狩④15MW66kV2031年11月以降約1.1ha造成中(2028年度から分譲)
石狩⑤300MW275kV2032年12月以降約12.1ha(東西2区画)造成中(2027年秋ごろから分譲)
苫小牧400MW187kV2030年8月以降約47ha造成済み(価格は約47億円)

石狩の5カ所が合計590MW、苫小牧が400MW。合わせて990MW、ほぼ1GWです。

工業用水は、石狩が1日約5,000㎥、苫小牧が1日約32,000㎥を使える見込みとされています(ただし申し込み順のため、全量は保証されていません)。

どうやって選ぶのか:配点の中身

審査は外部の審査委員会が行い、100点満点で採点します。

審査項目中身配点
事業計画の実現可能性建設計画、運営計画、事業を長く続けられるか(国際情勢も踏まえて/転売目的でないこと)、資金計画40点
事業者の力事業を進める体制、財務の安定20点
地域貢献・地域共生道内産業のAI化・人材育成(10点)、地元企業との取引など(10点)、地域との共生(10点:住民の相談窓口を道内に置くことなど)30点
環境負荷の低減道内の脱炭素電源の活用、効率の高い設備(電力・水・排熱利用)、省エネ法の順守10点

注目したい点が3つあります。

  • 価格の競争はありません。 いくら払うかではなく、計画の中身で選ぶ方式です
  • 「転売目的でないこと」が明記されています。電力つきの用地を手に入れて、そのまま高く売る、という使い方を防ぐ狙いです
  • 「データの安全な管理に支障を及ぼすおそれがある」と道と市が認めた場合は失格になる、という条項もあります。「国際情勢を踏まえた事業継続」とあわせて、国がデータセンターの安全認証を検討しているという最近の報道とも重なる考え方です

また、道の補助を使う場合には、使う電気の60%を脱炭素電源にすることが求められます。審査でもこの数字を参考にするよう書かれています。

スケジュールは、応募の受け付けが12月4日まで、企画提案書の提出が12月14〜21日、ヒアリングを経て、2027年1月以降に選ばれる予定です。

【現場視点】公募要領から読み取れること

論点1:道が先に並んでも、電気が来るのは2030〜2032年

公募要領の数字でいちばん重いのは、「電気が来る時期」の列です。

道が先に申し込みを済ませていても、苫小牧で2030年8月以降、石狩では2031年10月〜2032年12月以降です。今から5〜6年先です。しかもこれは「目安」で、公募要領自体が「他工事との輻輳や資材調達の長期化等により、連系可能時期は延伸する場合があります」と書いています。

それでも、この公募には意味があります。電力網の増強は、申し込みがなければ始まりません。道が先に並んでおいたからこそ、この時期なのです。事業者が今から自分で申し込んでいたら、もっと後ろになっていたはずです。

北海道の電力事情を書いた記事で触れたとおり、北海道は2030年代に向けて需要と供給がぎりぎりになる見通しです。その中で、限られた電気を、どの事業者に、どの順番で配るかを、道が自ら決めにいく。これが今回の公募の本質だと考えます。

論点2:区画の大きさは「ケーブル1本」で決まっている

石狩①は、80MWずつの2つの区画に分かれています。理由は公募要領に書かれています。

北海道電力ネットワークが標準的に採用している66kV地中ケーブルの最大仕様(1回線当たりの供給力)が概ね100MW程度となっているため、2区画に分けています。

つまり、66kVの地中ケーブル1本で送れるのは、おおよそ100MWまでです。それより大きな電気を受けるには、ケーブルを増やすか、もっと高い電圧で受ける必要があります。実際、300MWの石狩⑤は275kV、400MWの苫小牧は187kVで受ける計画です。

高い電圧で受けると、データセンター側に大きな変電所が必要になります。石狩⑤と苫小牧では、電力会社の送電鉄塔や通信用の鉄塔、無線局舎を建てる用地を、事業者が無償で提供することも条件になっています。

データセンターの大きさは、建物の広さよりも先に、「電気をどの太さで受けられるか」で決まる。それが数字ではっきり見える資料です。

論点3:選ばれたら、すぐに動けるか

選ばれた事業者には、時間の余裕がほとんどありません。

  • 2027年2月初旬までに、電力会社と接続供給契約の申し込みと、設備設計に関する覚書(費用を実費で払う契約)を結ぶことが、目安の時期で電気を受ける条件です。申し込みには単線結線図(電気の流れを示す設計図)や構内のレイアウト図も必要です
  • 選定は2027年1月以降の予定です。選ばれてから数週間で、受電設備の基本設計を出すことになります
  • 土地も、石狩では覚書から原則2年以内、苫小牧では選定から半年以内に売買契約、1年以内に所有権の移転が条件です

これは、応募の時点で、すでに設計がかなり固まっている事業者でないと難しい、ということです。審査で「実現可能性」に40点が配られているのは、この現実と重なります。

論点4:5〜6年の「すき間」をどう埋めるか

電気が来るまでの5〜6年、事業者はどうするのか。考えられるのは次のような手です。

  • 建物を先に建てておき、電気が来たらすぐ動かす。 ただし、使えない建物を何年も持つことになる
  • 小さく始める。 石狩②(40MW)や④(15MW)のような小さい区画は、規模の小さい事業者や、まず一部だけ動かしたい事業者向けとも読めます
  • 自前の電源と組み合わせる。 10月19日に発表された日立・東京ガスなどの「電源併設型データセンター」のように、敷地内で発電する方法です。ただ、6カ所のうち都市ガスの供給エリア内にあるのは石狩②③④の3カ所だけで、300MWの石狩⑤と400MWの苫小牧はエリア外です

どの手を取るかは、企画提案書の「建設計画」「事業運営計画」にそのまま表れるはずです。

論点5:「中身で選ぶ」の良い点と難しい点

価格ではなく計画の中身で選ぶ方式には、良い点があります。お金を多く出せる会社が勝つのではなく、長く運営し、地域に根づく事業者を選べます。住民との対立が各地で起きている今、相談窓口を道内に置くことなど、地域との共生を配点に入れたのも意味があります。

一方で、難しさもあります。

  • 「地域貢献」「共生」は、提案の段階では約束でしかありません。選ばれた後に、その約束が守られているかを誰が、どう確かめるのかは、公募要領には書かれていません
  • 審査は順位の合計で決まり、評価点が50点以上の委員が3分の2を超えないと選ばれない仕組みです。その場合は「改めて公募を実施する場合がある」とされています。誰も選ばれない可能性もあるということです

「空押さえ」をなくす、もう一つの形

10月1日、送配電各社は、使うあてのないまま送電網の枠を押さえる「空押さえ」を防ぐルール変更をしました(「とりあえず押さえる」はもう通らない)。こちらは、押さえた側に条件を課すやり方です。

北海道の公募は、それとは逆の方向から同じ問題に取り組んでいます。公共が先に枠を押さえ、本当に建てる事業者を選んで渡す。「転売目的でないこと」を審査項目に入れているのも、そのためです。

この形がうまくいけば、ほかのGX戦略地域や、電力の空きが限られる地域にも広がる可能性があります。2027年1月に、6カ所それぞれにどんな事業者が選ばれるのか、そして誰も選ばれない用地があるのかに注目です。

まとめ

  • 北海道が10月20日、石狩(5カ所・590MW)と苫小牧(1カ所・400MW)、合計990MWのデータセンター事業者の公募を開始。応募は12月4日まで、選定は2027年1月以降
  • 仕組みは「電力申込内容の承継」。道が先に北海道電力ネットワークへ申し込んでおき、選ばれた事業者が引き継ぐ
  • それでも電気が来るのは2030年8月〜2032年12月以降(目安)。区画の大きさは「66kVケーブル1本で約100MW」という送電の制約で決まっている
  • 審査は100点満点で、実現可能性40点、事業者の力20点、地域貢献・共生30点、環境10点。価格競争はなく、転売目的でないことやデータの安全な管理も問われる
  • 選ばれた事業者は、2027年2月初旬までに電力会社と契約を結ぶ必要があり、設計がすでに固まっている事業者でないと難しい
  • 「空押さえ」をルールで防ぐ動きに対し、北海道は公共が先に押さえて配るという、もう一つの形を示した

電気が足りない時代、データセンターの立地は「土地を買う」から「電気の順番を譲り受ける」へ。 北海道の公募は、その変化をいちばんはっきり示す事例です。

※アイキャッチ画像はイメージです。石狩市・苫小牧市の実際の用地や設備を写したものではありません。


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出典

この記事は DCトレンド研究 が独立した第三者の立場で執筆しています。